嗚呼、遥かなる新東宝映画

映画好きなら、必ず辿り着くのが新東宝映画。

最近はシネマヴェーラなんかで特集が組まれ、再評価の兆しが高まっています。

なぜ、人々は新東宝映画に夢中になるのでしょう。

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東宝という映画会社は東宝から分離する形で誕生しました。史上最大といわれた(米軍の戦車までが出動するほどの)労働闘争である東宝争議の影響で、東宝では映画を撮れる状況ではありませんでした。政治的な状況にうんざりした大河内傳次郎はじめ、原節子山田五十鈴高峰秀子らのスターが組合を脱退し、新たな映画会社「新東宝映画製作所」を立ち上げたのです。

東宝誕生当初は、いわゆる文芸映画というジャンルで評価を高めていきました。お堅い感じの映画をたくさん作っていたのです。

東宝の路線がガラッと変わったのは大蔵貢という男の登場からです。経営権を獲得した大蔵貢は、早く、安く、面白く、のスタンスで低予算映画を増産し、その作品の多くが戦争映画やエログロ映画など、大衆が食いつくような要素を持ったものでした。とにかく早撮りで、ライブ感満載の作品は粗も目立ちますが、どこか情熱的で、演者や製作者が一つの方向を見て映画が作られていたことがわかります。

東宝映画の魅力といえば、ご都合主義のような展開に、その作品の短さが挙げられるんじゃないでしょうか。何も考えずに、さくっと観れる、映画本来の楽しみ方を提示してくれたのが新東宝映画なのです。

この期間に製作された作品のなかで、いくつか名作をご紹介したいと思います。

 

◆『肉体の野獣』監督:土屋啓之助
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女に裏切られた男が野獣となって、女に復讐するという悲しい映画です。

あまりにもさくっと観られてしまうため、色々と忘れてしまうことが多いのが新東宝映画の特徴でもありますが、この作品を観た後の衝撃のようなものはうっすら覚えてるので、多分名作だったような気がします。

 

◆『女獣』監督:曲谷守平

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東宝のエース曲谷守平監督作品。

東宝作品で何を観ようかなって思ったら、この監督の作品を観れば、まず間違いはないはずです。

この映画もまた暗く重たい話でした。

悪の組織にクスリ漬けにされてしまった女が組織に復讐をする話です。これはもう傑作です。

なんといってもライブ感が素晴らしい。ジャズのテンポに合わせて、リズミカルに物語が進んでゆきます。また、見所は若き菅原文太さんが出演していることです。文太さんの圧倒的無敵感はもう必見です。嵐のような銃弾の雨をコロコロと転がりながら避けてゆく文太さんの姿に笑いました。これはシネマヴェーラで観たんですが、周りのおじさんたちも笑ってましたね。さすが文太さんといった感じです。

 

◆『黄線地帯』監督:石井輝男

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ラインシリーズ2作目であるハードボイルドの傑作です。

陰謀にハメられた暗殺者が女と逃避しながら復讐を画策してゆくというお話です。新東宝映画では珍しいカラー作品となっています。

これはさすが石井輝男といった感じで、シナリオの完成度も高いですし、ドラマとしても一級品となっています。

ラインシリーズはオシャレなので昔のジャズとか好きな人はハマると思います。

 

東宝映画は勢いだけで撮っているので、当たり外れが多いのですが、駄作でも良いもの観たなあってなるのが新東宝映画の愛すべきところなんでしょうか。

僕自身、新東宝映画を観る際は、ハードルめちゃくちゃ下げて観ます。映画って本来、構えて観るものではないですもんね。暇だし観るか~ってテンションで観れて、バカだなあとか、面白かったなあってシンプルな感想を持てる映画体験って大切だと思います。