いばら美喜(2)『死神がくる!』

いばら美喜の『死神がくる!』(学園恐怖シリーズ)

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これも超面白かった。面白い漫画に出会ったときって面白いってしか言えないものですね。ちゃんとした批評ができない。

この作品は、中二病みたいな死神が人間の眼を食べていく話です。ストーリーはどうだっていいんです。とにかく読んでもらいたいです。

いばら美喜はトンデモなオチで有名な作家ですが、この物語のオチもトンデモでした。じいさんが蜥蜴に取り付いた時のヴィジュアルも完全勝利って感じで好きでした。

いばら美喜面白い!もっと他の作品も読んでいきたいです。

いばら美喜(1)『謎の恐怖少女』

いばら美喜の『謎の恐怖少女』(学園恐怖シリーズ)を読みました。

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いままで、ホラー漫画はあんまり興味なかったのですが、これはめちゃくちゃ面白かった。

絵も好みだし、パンチ力ある内容に圧倒されまくりでした。

なんといっても主人公の少女が、全く怖がらないのが面白い。幽霊たちが全力で怖がらせようとしてくるのですが、少女は全く微動だにせず、終始無反応なのです。

後半のフィジカルバトル展開もアツいですし、いばら美喜は要注目の作家だなと。

余談ですが、ホラー物でフィジカル的接触があるやつは全部好きですね。幽霊を殴ったり、逆に幽霊からタックルされたり。近年の『貞子vs伽椰子』も貞子のフィジカルアタックが見れて大満足でしたね。

創作短篇『涯への散歩』

 月を見すぎたら、目が馬鹿になった。視界にずっと月の残像がゆらめいてる。世間がスーパームーンなんて騒ぐから、ちょっと見てみようってんで外に出て月ガン見してたらこれだよ。月の光はマジでヤバい。ずうっと見てたら目の奥がこうじんじんしてくる。普段感じない光を浴びて神経が驚いているんだろう。ああなんかヤバいな。ヤバいと言えば、俺の生活状況。これがまた絶望的にヤバい。大学を卒業してから定職に就かず、アルバイトをやったり辞めたりを繰り返してきた。今はなにもしてない。故に金なし。家賃も3ヶ月滞納してる。そろそろ大家の態度もヤバくなってきた。日々が退屈すぎて、死のうかななんてふと思ってみたり。どうしたもんかな。だからこうして深夜に外へ出ては、あてもなくふらついて疲れたりする。今日は月が綺麗だから、なんてそんなことはどうでもいい。こんな毎日だから感動もない。
 俺は座っていたベンチから重い腰をあげると、再び歩き始めた。夜の隅田川はどこか不気味だ。闇に揺らめく水は全てを呑み込んでしまいそうだ。この川で何人の人々が死んでいったのだろうか。この川は遊女の涙だ。男に裏切られた女が最後に流した涙なのだ。白鬚橋を渡り、明治通りを西に進む。
 ここで人生なんて振り返ってしまったら、それこそ終わりだ。俺の生活は終わってるけど、俺の人生はまだ終わってないと信じていたい。ヒップホップを聴きながら深夜の道をふらふらと。なんだかいい感じだ。このまま西へ進むと南千住へ着く。気分じゃないから南へと山谷を目指す。誰もいない商店街を歩く。ゴミの山かと思ったら人だった。日雇い労働者だろうか。俺は少しげんなりして煙草に火をつけた。夢うつつな心地をあそばせ、俺はただふらつく。珈琲を買おう。語りたいことなんて無くなった。俺はただ魂のように揺らめくのを望む。そんな風にぼんやりとしていたら後方から声がした。
 「おめえさん、道化師を見たことがあるか」
 声のした方を振り向くが、誰もいない。幻聴か。俺もそろそろキテるなって、再びふらつこうと前を見ると一人の老人が俺の行く手をふさいでいた。
 「道化師だよ。道化師を見たことあるかってんだ」
 老人は凄い悪臭を放ち、俺の目をじっと見つめていた。
 「ないですけど」
 俺が動揺しているのを見てとると、老人は満足そうににやつく。どうでもいいけど、すげえダサいセーター着てんな。どこで拾ったんだよそれ。
 「俺が道化師だよ」「はい?」「この俺が道化師なんだよ」
 月の光を見すぎておかしくなったんかな。老人は続ける。
 「道化師っていうとわからねえかな。案内人っていった方がいいかもしんねえな」
 「案内人ってなんすか?」
 「おめえさん、魂って信じるか?」
 「ええ、まあ」
 「じゃあ、話が早えや」
 老人は口をモゴモゴして痰を吐きだした。老人が吐いた痰は地面に落ちることなく、宙にとどまった。突然のことに頭の処理が追い付かない俺に老人は言う。
 「これは俺の魂箱だ。痰じゃねえよ。言ってしまえば魂の入れ物だな。おめえさんにもあるんだよ」
 「魂を吐き出してどうするんだ?」
 「まあ、まてや。まだ魂は吐き出しちゃあいねえよ」
 老人は何やら気合いを入れて、奇声を発した。すると宙に浮いていた痰がボコボコと沸騰したように動き始めた。どうやら肥大しはじめているようだ。
 「今、魂のガワに俺の霊魂が入った」
 「えっ」
 俺はとうとうキチガイになってしまったのだろうか。先程まで話していた老人は消え、ボコボコと沸騰する痰が俺に話しかけているのだ。 
 「おめえさん、世界を浮遊して見てみたいって思わないかい?」
 痰はボコボコと俺に問いかける。俺は何も言えなかった。
 「おめえさんの魂の叫びが俺を呼び出したんだ。勘弁してくれよな。せっかくの休みだったんだ」「やってみるか?」
 痰は相変わらずボコボコしている。
 「あの、ずっとそんな風にボコボコするんすか?」
 「これは一時的なものだ。十五分もすればおさまる。それまではちょっとだけ気分が良くないけどな」
 「俺の魂の叫びがあんたを呼び出したってどういうこと?」
 そう聞くと、痰は咳払いをした。
 「そうじゃな、おめえさん退屈しておるだろ?人生に。退屈さにも度合いがあってな、限度まで退屈になると防衛本能というか、そういったもので魂が助けを求めはじめるんだ」
 「俺の魂が助けを求めた?」
 「うむ。魂というものは脳とは別の組織体だから理解できなくても当然だ」
 「じゃあ、最初に言ってた道化師ってなんすか?」
 「案内人だよ。おめえさんの魂は肉体におさまることを拒否しておる。だから魂を解放してやるんだ。その役目を担っているのが、俺みたいな道化師ってわけだ」
 魂?痰が魂などという言葉を発するなど夢にも思わなかった。だが、目の前で繰り広げられている一連の出来事は現実なのだ。たとえ夢うつつな気分になっていたとしても、そのくらいの判断はつく。魂の解放。そのようなワードは聞いたことがあったが、まさか本当に存在するとは。そこまでは理解できるような気がするが、問題はそこから先だ。俺の魂は解放されたがっている?じゃあ、魂を解放したらどうなるんだ?あの世に行くってことか?それとも霊魂となって現世をさまよってしまうのか。
 「後者じゃな」
 痰は俺の思考を読みといたのか、すぐさまそう言った。
 「じゃあ、俺のこれからの人生どうなっちまうんだ?俺の意思では止められないんだろ?魂が出たいって言ってんだろ?めちゃくちゃじゃないっすか」
 「仕方ない。おめえさんの身から出た錆だ」
 うわあ。マジかよ。最悪だな。散歩なんてしなきゃよかった。なんでこんなことになるんだよ。もっと真面目に生きてればよかったんかな。マジで。はあ。
 「魂を解放するのもけっこう良いもんだぞ」「生きてるとか死んでるとかそんなもの関係なくなる」「生と死を越えた、新しいステージに立てるんだぞ」
 「生きてるか死んでるか分からないとか、悲劇じゃないですか。そんな曖昧な状況、きっと耐えられないですよ」
 「初めは怖いわな」「肉体を越えた存在だから慣れてきたらすっげえいいぞ。全てが思うままになるんだ」
 俺はワケが分からなかった。ほんとに。ただ夜道を散歩していただけなのに、なんでこうなってしまったのか。俺は、人生を振り返ろうとして止めた。しかし、振り返らざるを得ない状況に陥ってしまったのだ。老人は身から出た錆だと言った。なるほど。そうに違いない。俺は人生をテキトーに生きてきたのだ。テキトーに生きてきたツケなのだ。不思議がる必要なんてない。これが自然の摂理だと受け入れれば済む話なのだ。もう抗うには遅すぎる。考え方を変えないとな。月だってスーパームーンになるんだ。俺だってヘンテコな存在になったって良いじゃないか。ってことで俺は全てを受け入れる覚悟を据えた。
 「覚悟できたんだな」
 「はい」
 「もう、普通の人間には戻れないぞ」「といってもおめえさんには選択肢はないがね」
 「わかってますよ。はやくやっちゃってください」
 「ずいぶん物分かりがいいんだな」
 「もう諦めてますから」
 「わかった。じゃあ行くぞ。痛いぞ」
 「えっ、痛い?」
 目映い光とともに全身に猛烈な痛みが走った。細胞ひとつひとつが焼けていくような凄まじい痛み。細胞が剥がれてゆく。俺は痛みに悶えた。しかし、声はでない。次第に感覚というものがなくなっていく。落ち着いた頃には俺はもう霊魂になってしまっていた。
 そこは、現世とはかけ離れたところだった。まるでドーム型のプロジェクターのようなものが張られ、そこに様々なイメージが写しだされていた。そのイメージがなんなのかは俺には分からなかった。なんか、ヤバそうな、見てはいけないようなイメージってことしか俺には分からない。ひとつだけ見覚えのあるイメージがあった。バブリシャスのコマーシャル映像だ。巨大な象が木々をなぎ倒して迫ってくる。なるほど、これは俺が幼い頃に恐れたトラウマコマーシャルだ。今みても別に恐くはないが、いい心地はしなかった。
 ・・・おーい!
 ・・・誰か!いないのか?
 試しに、この状況で正解と思われる言葉を発声してみた。しかし、それは発声というよりテレパシーのような思念体となって周囲に響き渡った。もう、言霊というものはなくなってしまったのだ。
 ・・・じいさん!じいさんどこ?
 ・・・おめえさん、意外に慣れるの早いな。
 ・・・じいさん!
 俺は老人に愛着というものを覚え始めていた。それに、なんかふわふわしたような包容的な感情が内から芽生えてくるのを感じた。
 ・・・じいさん!俺どうなったんだ?
 ・・・おめえさんはいま、霊魂の赤ちゃんだ。これから人間の子どものように成長して、完全な霊魂となるのだ。身体をみてみなさい。
 ・・・は?
 俺は目を疑った。そこには俺の身体はなかった。痰のような物体があるだけだ。
 ・・・これ、痰?
 ・・・痰ではない。魂箱だ。おめえさんは初めてだから俺が入れといてやったんだ。普通はここまでしないぞ。
 ・・・ここは、どこなんすか?上に写し出されてるイメージはなんすか?
 ・・・ここは魂界だ。あのイメージは特に意味はない。現世でいう空のようなものだ。おめえさん、ひとつ言っておくがな、ここでは意味を求めたらだめだぞ。意味というものは現世でしか役に立たない。人間が作り出したまやかしなんだ。
 ・・・まやかし?
 なるほど、老人の言うことにも一理ある。意味なんてものは人間が後々つけた理屈でしかないんだ。人間が勝手に事物を理解しようと、エゴイスティックに産み出した概念でしかないのだ。
 ・・・なんか、俺ここに馴染めそうっす!
 俺は溌剌とした気分になったが、老人からの返答はなかった。
 それから、いくら話しかけても老人はなにも言ってはこなかった。もういなくなったのだ。これからは自分でなんとかしろということなのか。なんとかしろって言ったって、どうすれば?そうだ意味を求めてはいけない。もう全てを自然に任せようと誓ったばかりではないか。何が起きても動揺しないぞ。俺は強いんだ。スーパームーンのように輝かしいんだ。全てを超越した存在だ。現世がなんだ。俺は無敵だぞ。
 意気揚々とアッパーな気分になった俺の前に現れた"それ"に俺は愕然とした。"それ"はもう悲劇的であった。俺は"それ"を見た。"それ"は俺を見ていた。そして"それ"は俺を取り込んだ。
 俺は"それ"になった。

 そして、"それ"は"それ"となった。


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影丸譲也(1)『白鯨』

『白鯨』(講談社)原作:メルヴィル/構成:梶原一騎/作画:影丸譲也

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メルヴィルの原作は読んでないのですが、これはよかった。面白かった。見所はとち狂った船長と船員のやり取りもそうですが、なんといっても影丸譲也の作画でしょう。


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カラーページのひとコマひとコマがもはや絵画。ここまで海って感じの海を描けるのは漫画家でもそういないんじゃないでしょうか(別の人が描いてたらごめんなさい笑)。白鯨に戦いを挑む男たちの描写も影丸譲也の野性的感覚がよくマッチしていて見応えがあります。ひとつ言うとしたら食人族のキャラクターの扱いが軽すぎてなんだかよく分かんない感じになってたなあということ。でも全体的に面白く、荒波にのまれていくような感覚で物語にぐいぐい引き込まれていきます。

梶原一騎に関しては、少し苦手意識を持っていて、これと『男の条件』くらいしか読んだことないんですけど、これからもっと読まないとですね。

創作短篇『寒の戻り』

 自分のことを道化師とか言ってるやつはどうせ太宰治の短編集かなんかを読んで感化されちまった哀れな野郎でしかない。新潮文庫かなんかで読んだんだろう。たぶん。本屋に行くと必ず置いてあるもんな。共感した、みたいなポップなんか添えちゃってさ。太宰に共感するの止めようぜ。お前みたいなやつが太宰に共感できるのか。ほんと。ああ、くさくさしてきた。俺、更年期じゃないけど、最近イライラしやすいんだ。どうでもいいことに怒っちまってよ。もうわかんねえんだ。なにがって?わかるわけねえだろ、そんなの。お前はわかるのかよ。わかんねえだろ。どうせ。ところで、お前、ほんとうの道化師を見たことあるか。ねえだろ?俺は見た。ほんものの道化師を。だから太宰の小説読んだだけで「俺は道化師だ」とか言うやつの土手っ腹に足蹴かましたくなるんだよな。道化師ってな、お前らが思ってるようなもんじゃねえからな。もっと悲惨で醜くて、ホームレスの垢みたいな臭いすんだよ。まじで。上野とかにいる感じのやつ。小綺麗なシャツ着て、ぼくは道化師ですってか。馬鹿にすんじゃねえよ。
 そこまで話すと俺は沈黙した。通行人が憎悪混じり視線を浴びせてきたからだ。なにもそんな目で俺を見なくたっていいじゃないか。俺はただ少しムカついただけだ。先刻寄った古本屋でジジイが「君、太宰とか読むんだ。若いねぇ~」って俺の持ってた「人間失格」見て言いやがったの。俺カチンときて「太宰だけじゃないッス。徳田秋声とかも読みます」っつった。そしたらジジイ、ニヤニヤして「ふ~ん」だとよ。俺、すっげえ腹たった。「人間失格」持ったまま、金払わずに店でてやった。「君ぃ」ってジジイを無視して、俺は神保町をダッシュした。やっぱ神保町で太宰治買うのは失敗だったななんて考えながら。
 俺、ダッシュしたら疲れてさ、上島珈琲あったから入ったの。黒糖ミルクコーヒーあんじゃん?あれ旨いよな。だから、それ飲もうってんで、入ったわけよ。そしたらよ、まず席とるために店内はいるじゃん?すっげえ混んでたの店内。だから人かき分けながら席探そうと思ったらババアにぶつかっちゃって、ババアのコーヒー床にぶちまけた。普段だったら、すみませんっつって謝るけど、そのババア、俺の顔睨み付けて「ちょっとお!なにすんの!」って叫んできた。だから俺、その場にいられなくなってダッシュで逃げた。なんでこうだめなんだろうな、俺。どこいってもダサい感じになっちまう。挙げ句の果て、これだよ。駅前で人目憚らず演説みたいなことしちゃってさ。終わってんな、俺。
 と、演説も佳境に入ってきたところで、俺の背後に人が立っているのに気づいた。振り返ると、そいつは若い警官だった。そいつの後ろには万年巡査部長みたいな面構えの辛気くさそうな警官もいた。「お兄さん、なにしてんの?」「いや、ちょっと」「ちょっとなに?」「なんか喋りたくなって」「喋りたいのは分かるけど、ここ人通りも多いしさ、人様の迷惑になるから止めようよ。実際、通報も来ちゃってるわけだからさ」「はあ」「そんなに喋りたいのならカラオケでもいって、そこで存分喋ってよ」「はい」「お兄さん、身分証とかある?」「あります」俺は素直に身分証を俺よりも若い警官に渡した。
 「お兄さん、なんて読むの?」「かぶらぎです」「蕪木源次郎さんね。ちょっとさ、そこの交番で少し話そうか。お兄さん、喋りたいんでしょ?」はい、つって俺は素直に従った。
 交番は和風な作りで瓦みたいな屋根だった。中に入ると、パイプ椅子を出され「座って」と促された。俺が座るとパイプ椅子はイヤな音をたてて軋んだ。「お兄さん、所持品とか確認してもいいかな」俺は財布と、先刻古本屋から持ち去った「人間失格」を出した。また、この本についてとやかく言うんだろう。何とでも言えよ。俺の虚しさは底抜けてるからな。恐いもんなんかねえよ。と、身構えていたのだが、若い警官は本については何も触れず、俺の免許証を凝視していた。それからというもの、物事は淡々と進み、「落ち着いた?もうこんなことしないでね」と俺は警官に送られて交番を出た。
 外は冷えていた。くさくさした気分も消え失せていた。パーカーのフードを被り、人混みの中をゆっくりと歩く。帰って「人間失格」でも読もうか。読んだことなかったんだよな。足を引きずるようにホームレスが歩いている。俺はそいつに微笑みかけ、親指を立てた。

さいとう・たかを(1)『ト号ナンバー3死線指令』

謂わずと知れた、劇画界のレジェンドさいとう・たかを氏。未だ現役で、ゴルゴ13をはじめ、鬼平犯科帳無用ノ介サバイバルなどの傑作を世に生み出し続けています。

 

今回は、氏の膨大な作品の中から『ト号ナンバー3死線指令』(朝日ソノラマ)を紹介したいと思います。

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表紙はハードボイルド然としていますが、中身は案外コメディチックで、こども向けな内容となっています。全3話の単話完結シリーズものです。

世界連邦秘密警察日本支部ヤマト課ト号に所属する主人公はコードネームナンバー3としてスパイ活動を行っています。時代設定は当時の日本に見てとれますが、世界連邦などの存在からわかるように世界線が少し違うようです。

ガチムチのマッスルフィロソフィーを持つ主人公は少しお茶目で、スパイとは思えないような向こう見ずな性格です。次々の難事件をヤマカンで解決していく強引さ。そして、運と力で敵をねじ伏せていく展開に少々拍子抜けするとこがありますが、結構面白かったです。

さいとう・たかをというともっとハードで硬派なイメージを持たれる方もいらっしゃると思いますが、劇画界から見てみると、どちらかというと少年誌寄りの作風が多いです。少年誌風の展開を大人な絵柄と設定で魅せていくとこに、氏の新しさがあるのでしょう。

個人的にさいとう・たかを作品では、人犬(ひといぬ)が気になっています。いつかこのブログでもご紹介したいのですが、如何せん高値で取引されているもので、いつになることやら。

【短歌】・・・徘徊

  • 済みませんトイレどこすかと弾けて消えゆく俺の言霊

 

  • 済みません注文いいすかと弾けて消えゆく俺の言霊

 

  • 居場所どこ自室をさまよい小指うつ悶絶転がり滲む涙

 

  • つり革を二本の手で持つおっさんの吐く息もろに顔面に

 

  • 半袖で毛布にくるまり我に帰るパソコンの画面暗がりに浮かぶ

 



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